もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

麤 皮

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キーワード 鹿皮キョンセーム に目を留めた理由

実のところ 小説 『麤 皮』 を想い出したからでもありました。

中井英夫の短編小説 『麤 皮』は

バルザックの小説 『麤 皮』 

(以下 中井英夫『麤 皮』 からの説明引用)

----貧窮した一人の青年が奇怪な老人から一枚の護符を貰う。護符は凡ゆる望みをかなえてくれる代わりに、かなう度にすこしずつ縮まってゆき、畢に消失すると同時に青年も生命を失うという。----

を素材に、中井自らの父との相克や創作への姿勢、意思、意欲を、小説家として大成する前のバルザックの自伝になぞらえて語っていると想われる3重入れ子構造なお話で、なかなか面白いものです。1942年旧制府立高二年の時の作、校友会誌『八雲』に発表されたというもの。ゴシックロマン、E・ポー風な内容、その後の2人の作家の廻る因果を考え合わせると人の生の摩訶不思議な渦に吸われてゆく想いがしたものでした。

ちなみに 麤 の文字を手持ちのコンパクト漢和辞典で引くと 

 粗い 粗雑 

 あらあらしい はげしい 

 はなれる 遠ざかる 

 あらぬの

 ほぼ だいたい あらまし

 大きい

 わらぐつ

 くろごめ 玄米 

とあり、 鹿 一文字とは意を異にするのですね。 

麤 皮 の画像