花 腐
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春されば 卯の花腐し(うのはなぐたし)
わが越えし 妹が垣間は 荒れにけるかも
『万葉集』第十巻 相聞 「花に寄せき」一首目がこれだというのは
高橋睦郎 「 季をひろう 」 で知りました
文字通り、わが共同住宅の植え込みに咲いた卯の花もすっかり散り敷き
梅雨真っ盛り
雨は 浄化 とともに 腐敗 をも 齎します
『 花 腐 し 』 はなくたし という言葉が近年陽の目をあびたのは
< 腐 > に拘れば
数年前から腐女子なる言葉も世に敷衍し始め
最近では趣味に興ずる女子一般をふつう?に指すようにも想われ、あながち揶揄表現ばかりではないように感じます
、、、って、私が同属の色眼鏡でしょうか(笑)
もひとつ 書棚の積読本の中には、J.K.ユイスマンス 『 腐爛の華 』 があり
これは、かのお腐乱す、じゃなくて国書刊行会:仏蘭西世紀末文学叢書の田辺貞之助譯で
原題は <スヒーダムの聖女リドヴィナ> の処を、小説の内容から上の表題にしたというから田辺先生やってくれます、、、
フランドルの画家の家に生まれたユイスマンスが自然主義文学に身を投じ
作品『さかしま』の後に 『彼方』『出発』と、正式なキリスト教改宗を表明し
独自の審美的なゴールとも言われる<ユニテ>を目指したキリスト教3部作『出発』『大伽藍』『修練者』の他作品のひとつで
かなり面倒で曲折のある「心霊自然主義」(、、、なんのことでしょう)に傾倒した たましひの腐敗と浄化の物語 のようです。。。
黴黴 腐乱 小蝿ぶ~ん のこの時期にはもってこいのお話かもしれません
さてさて 最後に 今朝耳にした七夕公開の映画は たましひの浄化 に繫がるでしょうか
アニメーションキャラクターはアニメ映画『銀河鉄道の夜』と同様のようです
ほんとうのさいわい を求めた賢治さんが、
みんなのさいわい を求めて火山に身を投じる役目をブドリに托す
自己犠牲の選択は、或る意味では日本人的であり宗教心を想わずにはいられません
この書の読者が少年諸子である場合を慮る
少年諸子はあまり深く人生の意義を思って
考え深くなる当然の結果、
憂鬱な気分に陥りはしないかと虞れる
少年諸子はあまりに魂をしめつけられてはならない
こんな杞憂が払拭される出来あがりになっていればいいですね。
画像上:バーン・ジョーンズ ファリンドン・コレクション・トラスト いばら姫連作のうち中庭右部分
画像中:ウツギ web転載
画像下:バーン・ジョーンズ ファリンドン・コレクション・トラスト いばら姫連作のうち中庭左部分