睥 睨
もう何年も
あのような
へいげいする まなざし には
出会わなかったように想う。
雑踏が行き交うターミナル駅近くの通路
排気ガスと騒音と熱風と時折のアンモニア臭
2ヶ月ほど前からそこで寝食していると思われる いわゆるホームレス男 の
横文字の大判書籍を丹念に読みながらノートをとる姿
書籍は日に日に増してゆき
みな ハードカバー ちいさなポイントの専門書風
今では船形にしつらえたダンボールベッドの袖机に十数冊が積まれた
彼が船を留守にする折
書籍は色目立つ大判バスタオルで大事に覆われる
書籍はどこから運ばれてくるのか
暗い街路光で、微細な文字の読書が可能なものか
近くの予備校に向かう通りがかりの高校生の群れが驚きの声をあげる
「すげぇ 何語だよ あのオッサン 俺たちよりアタマいいかもなぁ」
(、、、あたまがいいのではない、生活がすさんでも知的好奇心が強いのだ)
そんなある日 観察する視線に気付いたのか
黒々とした鬚面から上目遣いの鋭い視線がこちらを射た
、、、反射的に視線を外し 内心の赤面と狼狽、、、、
ワタシハ アナタガ キニナリマス