もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

落 蝉

低気圧がひとつ逝けば 秋、、、

風が乾き 空には絹雲 落蝉を多数見かけるようになりました

肢腰を傷めて後 東京の田舎者がほぼ半年ぶりに都心に出て感じたことども、、

有名百貨店のぼりに中国語

アジア人向け路面銀行両替店の増加

これまで年配路上生活の方々が多数居た通路がきれいになり

すぐ別の場所に、年若い?(30代後半~40代前半)方がぽつぽつと

福岡の街はアジア系観光客向け表示が色目立ちている話は聞いたことがありました

都心百貨店も、外国人観光客をないがしろにできない経営状況が切実か?

、、またもや沖縄から出てきたばかりという中年の方に道を尋ねられ

わたしは道案内に向いている容貌なのかもしれません(汗)

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来週は再々帰省という、この夏の終わりの半端な余暇に

車で行けるシネコンを選ぶと、時間が合ったのは宮崎映画のみ

ジブリ美術館も、スタジオジブリ2CVもママチャリで行ける近さにありながら

友人の薦めでビデオを強要貸与されたり(笑)、、TV映画を観たり

特別な強い興味もなくこれまで来て、劇場で観たのは息子が小学生時の「千と千尋」ひとつ

ここ関心空間でも、好意的な鑑賞評をあまり見かけなかったもので

先入観を排除しつつ あくまで 自分の眼 で観るよう努力しました

そんな脱力眼で観る 『 風立ちぬ 』 鑑賞記録を少しだけ

70歳を過ぎた監督が、万人向けのテーマを含み、ある程度の興行収益を要求される作品を制作するとなると、制約も多く抱えるものが重くなるのは必須なことでしょう

堀越二郎:実在の人物や住友軽金属・三菱重工(という表記はあったかな?)など、固有名詞使用には、許可料の発生する面倒な手続きも多いはず

構想は3・11前とのこと

関東大震災地震後の群集の表現は細部にわたり留意制作に時間を費やしたというドキュ番組を、折りしもその夜のTVで確認しましたので、3・11追悼の意も無論込められているでしょう

企画書 http://kazetachinu.jp/message.html

二郎少年は、子どもの頃から飛行機好きで、イタリアの民間航空機創業者カプロニおじさんにいざなわれ、飛ぶ夢を度々見ます

成長した二郎も、飛行機で飛ぶ夢を繰り返し見るのですが

夢には、かならずと言っていいほど 墜落と廃墟が付随し 覚醒となる

あまり明るい夢とは言えません

特別な思想もなく、普通に誠実に設計技師として懸命に生きた人が

時代に飲まれていつしか軍用機の製作に携わる、、、

政治的にも社会的にもアイロニーを多く含んだ科白が上司:黒川や軽井沢万平ホテルで出会うドイツ人カストルプから聞こえてきます

海外視察で洋行したり、カストルプとの交流の余波か?二郎も特高にも追われる身の上となり、黒川宅に身を隠す

時代は戦争へと突き進み、日本の航空技術は20年以上遅れているという同期友人の科白や敗戦予測、、、

この後にやってくる菜穂子の死や、映画では描かれていない敗戦の惨事も

さまざまな示唆が、容易に想像力を与えてくれます

愛妻を失い 焼け跡に立ち尽くすことになる二郎に

P・ヴァレリーの 「 海邊の墓地 」 の一節 いざいきめやも、、が響くわけです…

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 立ち上がれ 繼起する時代の中に

 わが 肉體よ 打ち毀せ この思考する形態を 、、、(略)

 風 吹き起こる… 生きねばならぬ 一面に

 吹き立つ息吹は 本を開き また 本を閉ぢ 

 (不死の生命を望むな わが魂よ 汝の可能なる分野を汲みつくせ)

 P・ヴァレリー 「 海邊の墓地 」 鈴木信太郎譯 引用抜粋 もえぎ拙

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映画を観終わり、会場を出る折に漸く気づいた愚かものでしたが

平日の昼下がりの比較的空いた映画館の隅には

重度の障害を持ち寝たきりの方の可動ベッドが、お二人の介助者とともに、ちょうどドアを出てゆく処

また、わが母よりも年長とおぼしき杖を持ち白髪で腰を曲げたご夫人がお一人で

映画の内容はさて置いても

こうした宮崎映画の導引力を目の当たりにすると

やはり言葉を失う  そんな午後でした。

画像は 神奈川県 葉山森戸海岸よりの落日 

画像中 右は江ノ島

落 蝉の画像

落 蝉の画像

落 蝉の画像