もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

(タイトルなし)

 「 血 唇 」

その男は

 

師走の肌寒い雨の夜 東京郊外の病院にて

独り 野垂れ死ぬように息を引きとった

老獪作家の葬儀を引き受けた男

黒眼鏡 吊りズボン パナマ帽 という定番のいでたちで

      今夜も 

擦過傷の血の滲んだ言葉達を起立させる 

ギックリ腰は治りましたね

不埒な笑み は

かつての青年の歪められた硝子の意識の砦 

超克の輩との 緊縛の情憐 を 隠し持つ 

砂を噛み いきどおる 苦々しい唾

墓碑銘となった言葉の葬列の雪崩れは

King Crimson  の フレーズと重複し

私はひしゃげた笑みを浮かべながら

居心地の悪いはにかみに奥歯がみする

岸上大作・寺山修司宮澤賢治中原中也塚本邦雄

村山槐多・高橋和巳磯田光一・石井何某(ワスレタ)

35周年 追悼絶叫コンサート は 満員の人いきれ

   力石 徹 は 誰 に 殺された 

男のやさぐれた低音 と

無邪気な子ども いとけなき少年の 交雑する諧調が

繰り返し 紫煙に霧消する時折

私は 強靭な翼で飛翔する 言の葉の確かな翳を見た

 ( 居心地の悪い 舌足らず の  カッコよさだ )

もはや 自虐的諧謔は 彼方に追いやられ

薄皮を剥がされた 言の葉の質量 は 

赤面の想いとともに

実は 既に

君の 

左手の 掌に 

握り締められていた 石 

或いは 決して振り向りむいてはならない後ろ姿に翻る 

トレンチコオト の

纏わり附く 裳裾

  

童顔にニヒリズムを湛えた見覚えのある眼差しで

差し出された一冊の本を享ける折しも

なにか 思い切り悪く立ち上がる 私 がいた。

の画像