もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

緑 蔭

風化する哀歡の遠き過程あり 

       灌木の絮(わた)のひかりつつ飛ぶ

                       葛原 妙子

開花しはじめた薔薇さうびの手入れに

不具の肢に鞭打ち、TVクルーも取材にくる大きな園芸店に赴く途すがら

この丈高い垣根と塀に覆われた施設を初めて見た折

まるでどこぞの避暑地のリゾートホテルのよう、、と眺めたのはもう何年も前のこと

広大な敷地にはサッカーかラグビーができそうな運動場を併設し

樹木に覆われた庭に点在して配された緑に馴染む教会と修道院は

ここだけが周囲と隔絶された呈で、静かな黙想が似つかわしい

徒歩数分のところに最寄駅もあるというのに

市街の喧騒は、広い緑地と近隣の閑静な住宅街が隔てている

ちょうど親元を離れ上京した初めの年

学籍番号が隣の福岡出身のお嬢さまから、ガーデンパーティーのご招待を受けた

季節は今頃 東京の右の左もよくわからない田舎娘はぴあマップを片手に

調布つつじヶ丘駅から随分北に入ったように思う

彼女の住まう女子寮はカトリック系教会に附属するもので、宗教は問わずさまざまな大学に通う女子学生30数人を収容し、広大な緑地の中、門扉から奥深いゆるやかな長い坂を上がると林の中に在った

中は食堂や休憩室の共有スペースと個室部屋があり、パティオの在る薄暗い廊下の漆喰壁にマンドルラ型のくぼみがあって、そこにひっそりと小ぶりなマリア像が置かれていたのを憶えている

女子寮というより観想生活に相応しい造りに見え

昼の庭で催された男子解禁の賑やかな午餐の宴に多少の違和を感じ

元来は、修道院だった建物を改築し女子寮として利用したと思うと腑に落ちる

(現在は、女子修道院として使われているようす)

こんなことを想い出したのも、緑地の中に在る建物が醸す共通項があるからで

前者は、数年前に土地が切り売りされ、そこには高級マンションが建ち風景が一変

キリスト教解禁時代からある?宗教法人も統廃合されているようだった

時は流れ経済に翻弄され淘汰されれば

こころの在り処は変わらずとも、その修練、鍛錬の場である入れ物は変わらざるを得ないのか

このところ沸騰している憲法改正案の問題にも立ちかえり

国民投票に際しては、さまざまな見解を熟考の上 投票したいものです

これからのこどもたちが しあわせを実感できるように、、、。

江川 紹子 改憲バスに乗る前に

画像は箱庭のテッセン・白万重

緑 蔭の画像