無 常
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イワン は 馬鹿 だ
トルストイ のほうではなく
スメルジャコフが犯人のあの話のことである
父殺し は 実のところ自分なのではないか
いや 自分なのだ と
自責と妄想に苛まれながらイワンはしだいに狂ってゆく
この長長しい物語が永年に渡り読み継がれる訳は
一見、通俗的に思える生の機微を
父親殺しの事件に纏わる 三兄弟の複合的な語りの中で
当時の社会情勢も絡め
金銭的問題に加え
信仰、情愛、知性、激情が、
さまざまな人間模様の くどいほどの科白を通して
アリョーシャを中心に
浅薄な綺麗事にとどまらず
美醜清濁併せ持つ人間の姿を 或る種の情愛を込めて
活写しているところだろう。
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1月の幾日も、この物語の切れ切れが脳裡を霞め
眠りの浅い日が続き、昼夜の感覚を失いながら
大学病院に義母を見舞う日が続きました
電話で急変を知らされ
深夜の大学病院救命救急棟に駆けつけ
手術許可証に押印
強く手を握って手術室に送り出したのが最後
意識不明の植物状態が何日も続いた月末
義母は他界しました
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波乱の多かった義母の生
残された現実の物語に、結末は無く
そのシナリオは中空に放られたままの状態で
偉大な物語として伝えられる虚構の物語を反芻しつつ
生きねばならない、、、と思います。
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時を同じくして
この物語(亀山訳)を
高校2年生3学期の課題本に推奨した国語教師は
とある事件により処分が下されることになりました。