もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

尊 厳

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   ちっち うんう 

息子が排泄を知らせるようになったのは摑まり立ちの頃だったろうか、、、早々、幼児用便座に座らせ

ひとりで初めてできた時は、小躍りして誉めた事を思い出す

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10月末の夕刊連載 排泄と尊厳 の記事は

近い将来、身近に起こることゆえ気になった

しかし突然その日がやってくると狼狽するばかり

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3人の老親を4人の子どもで支える近況

親たち、それぞれの持病が悪化し、昨秋から 両肺炎・狭心症心筋梗塞による呼吸困難や意識混濁で救急車の依頼は4回目となる

実家の両親は様態も落ち着いたのでひとまず姉に任せ

今は入退院を繰り返しつつ、衰弱してゆく別居の義母が先決

仕事の都合がつけば、平日休日と、往復3時間の道のりを車を飛ばしながらあちらの家と病院を行ったり来たりの生活が続いている

数日前の朝 

義母はベット脇に倒れて初めての排泄粗相 歩行困難となった

前日は元気で食欲旺盛であったというから

翌日にまた食欲が出れば回復するだろうと同居実子も安易に思ったようだ

しかし、しだいに意識混濁で実子息子の名前にも混乱が生じる

前回の入院時より呼吸は安定しているとのことで

かけつけて様子を見ると 目を見開き 私の手を握り 私の名前を呼ぶ

尿意の折には、寝返りを頻繁にして言葉にならない声を上げる

息子に粗相始末をさせた母親のプライドがあり消沈しているかと察し

病状を推察しつつ自治体の施設に相談すると、20分後には介護福祉士の方がポータブルトイレ持参でやってきてくださった。なんと心強くありがたかったことか。

TVでの見よう見真似で、首に両手を廻させ持ち上げようとしても、軽くなった四十数キロの脱力体重は、鉛のように重くてどうにも持ち上がらない。2人がかりでようやくポータブルトイレに座らせる。用を済ませた義母は、安堵と疲れで眠ってしまう。

これまでの経緯を話した介護福祉士の方と相談の結果

介護認定申請は先送り

またしても救急隊のお世話になり、義母は、緊急入院となった

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病状は、持病の血小板血症からくる極度の貧血と心臓疾患

   たいへん 重篤な状態でした

カンファレンスルームで医師に告げられ、肝を冷やした

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ステージ5 末期癌でモルヒネ治療をしていた折の義父も、排尿時は、自ら用を済ませたくて起き上がろうとして看護師さんを困らせた。今回の義母も、意識が混濁する中、粗相の嫌悪からか必死に自力での排泄をうったえていた。

痴呆となればそうした意思も失せ、介護する側の献身に委ねられることになるだろう。

幸か不幸か、学生時代に、私は同居の実祖母での経験もある

できるだけのことはやってみようと思う。

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以下 朝日新聞:11月6日夕刊より引用

「ふつうに語り合いたい」(『排泄と尊厳』9) 文;高橋美佐子

生活とリハビリ研究所』代表三好春樹の話

「ウンコ・シッコを人間観の基本に置く」それが介護現場で長年培ってきた三好の考え方だ。「お年寄りとの一番大事なコミュニケーションは、便意や尿意という、体の中の自然からの声に耳を傾けて反応することなんだ」

「介護福祉の先進国である北欧ではなく、インドへ行こう!」三好はいま、介護職に就く人たちにそう訴えている。「上ばかり見ても幸せじゃない。だから下にもぐろうよ」

インドを最初に訪れたのは07年1月だった。

早朝、ガンジス川の沐浴を見に行った三好は、何千軒もの掘っ立て小屋と無数の人間の群れの真っ只中に入ったとき、怖くなった。路上生活者、物乞いする身体障害者、便とあかで悪臭を放つ子ども、線路に向かって排便する大人。生も死も、すべてがあからさまだ。

「ここでは『人間らしく』なんて言葉は通用しない。これも人間、あれも人間だ」

旅行中に一冊の新書を読んだ。作家堀田善衛の「インドで考えたたこと」だ。「アジアは、生きたい、生きたい、と叫んでいるのだ。西欧は死にたくない、死にたくない、と云っている」と堀田は書いた。

三好はいう。

「日本は『生きる』のが当たり前になって、今度は『死にたくない』とテレビの健康情報番組を見ては食べ物を買い占めたりしてる。でも、人間は食べて出すシンプルな存在なのだとインドは教えてくれる」

-生きることは排泄すること-

だからこそ私たちは「生きる証し」の排泄から目を背けるのでなく「人間の究極の尊厳」ととらえ、みんなでもっとふつうに語りたい。すべてはそこから始まるのだから。

画像中:お借りしたポータブルトイレに似たもの 介護HPより転載

尊 厳の画像

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