もえぎの日録

関心空間(2016.10.31閉鎖)から移行 日記とキーワードが混在しています 移ろう日々のことなどを記します

均 衡

日曜の新聞書評欄に村上春樹新刊本が掲載されていた。

神保町の新刊本屋にピラミッド状に山積みされていたのを見て

手に取るものの 気後れして棚に返した本。

この人の小説作品は8割は読んだように思う

初期のものはもうずいぶん忘れてさまざまな作品がないまぜになっている

初期の文体は、あちらの作家の模倣とも言われてきたが

十代の終わり頃から 群像新人賞を受賞した筆者(作者)と同時代を生きて 

自分自身も齢を重ねながら読む作品世界は 作者にはおこがましいが、ともに歩き走ってきたような感慨もある

(そういえば、『ウォーク・ドント・ラン』こんな本もあった 値上りに驚愕)

小説という虚構の中でのみ培われる 言語によって精査される或る種の精神状態(意識・認識)と

消費経済社会の現実の中での日常の衣食住に支えられた肉体を持つ自分というもの

虚構世界に埋没すれば忘れがちになる 

確かに生きる生活者としての自分とを 繋ぐもの を 常に浮上させてくれる

私にとっては、とても面白く興味深い世界を提示してくれる作家

村上氏が職業作家として本腰を入れ始めたのは確か、千駄ヶ谷ピーターキャットを友人に譲り、千葉市川郊外で一日10キロを走るジョギングを始めた頃だったろうか、、

書くことと走ることが平行して日常化されてきた頃のはじまり

K巣女史の書評を読みながら この本を もいちど手に取る気持ちになった

                  *

補記

しかしながら 以前に同じK巣女史の書評にそそのかされて購入した新刊本で、私は×××を付けたものもある。人間各個人の感受性には、複雑な違いがあるのは否めない。共感するこころもあれば、受け入れ難いこころもまた同時に存在する。

同様に 手練で緻密な文章により虚構世界へいざなってくれる伝奇小説や観念小説も実のところ私は大好きではあるのだが、これはこれでまた味わいの範疇がまったく違うものだからおもしろい。

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