薔薇を聞く
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香 は 聞く と謂う。
秋薔薇は、色鮮やかで 香も強いというが
それは夏の暑さを体得して
ひとまわり 花枝を伸張した
逞しい茎・枝・根の所以か
しだいに冷たく澄んでゆく大気に溶ける芳香
草の匂いが名残りの くゆりたつ青系の香
おびただしい棘に護られながらも
鬱蒼と色濃く茂った葉叢に咲く秋薔薇に
もうはや 皐月の華やかさは ない
冬の眠りに就く前に
神無月雨
朽ちゆく さうび の 秋の眺め
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秋の陽射しの強いコントラストを受け
その一部が燃上する焔のごとき蛍光色を呈する橙の華叢
紅の黒黒しい花弁 黄の嫉妬 青の馨
この薔薇園では 白薔薇 でさえも
交配を繰り返して得た人工美の極致を
華麗な演舞を いやおうなしに感じざるをえない。
この人工美
舞台裏には、
年間を通してのなみなみならぬ薬散・剪定・施肥・定植
ひとを育てるに近い繊細な手仕事が垣間見える。
私は食あたり ならぬ 花あたり を起こしたのだろうか
薔薇花弁に起こるハレーションに眩惑と頭痛を感じて
同じ植物園とは思えないような、人の居ない隣の野草園に逃げ込んだ。
神代植物公園薔薇園にて撮影薔薇画像を
夏・秋 と 更新しています。
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