俚 諺
薔薇さうび
遠きバビロニアの時代から多くのひとびとを魅了してきた時間
いまさらのように私が言挙げするまでもなく
馨・いろ・かたち ともにひとの手を煩わせながら
今に至る うつくしさ
秋の陽射しの強いコントラストを受け
その一部が燃上する焔のごとき蛍光色を呈する橙の華叢
紅の黒黒しい花弁 黄の嫉妬 青の馨
この薔薇園では 白薔薇 でさえも
交配を繰り返して得た人工美の極致を
華麗な演舞を いやおうなしに感じざるをえない。
この人工美
舞台裏には、
年間を通してのなみなみならぬ薬散・剪定・施肥・定植
ひとを育てるに近い繊細な手仕事が垣間見える。
私は食あたり ならぬ 花あたり を起こしたのだろうか
薔薇花弁に起こるハレーションに眩惑と頭痛を感じて
同じ植物園とは思えないような、人の居ない隣の野草園に逃げ込んだ。